本研究は、膵・胆道領域癌の切除症例におけるprospective studyであるため、現時点では標本・サンプルの採取を行い、保存している段階である。具体的には、現在までに、膵癌2例、下部胆管癌1例、十二指腸乳頭部癌3例、膵粘液性嚢胞腺腫1例の術前末梢血、術中門脈血、腫瘍、腹腔神経節、膵頭神経叢、上腸間膜動脈周囲神経叢、リンパ節の採取・保存を終了した。そのうち、腫瘍、腹腔神経節、膵頭神経叢、上腸間膜動脈周囲神経叢、リンパ節においては、ヘマトキシリンエオジン染色にて病理学的診断を行った。今後は更にサイトケラチン免疫組織化学染色を行う予定である。また、それぞれのサンプルにおいてDNAを抽出し、nested PCRを応用したアレル特異的増幅法(nested MASA法)にてK-ras遺伝子突然変異を検索し、分子生物学的診断を行う予定としている。 さらに本研究の予備実験として、当科における過去の膵癌切除症例のK-ras遺伝子突然変異の検索を行っている。現在までに、膵癌切除症例72例の腫瘍部のDNAをホルマリンブロックより抽出した。このうち、41例にnested MASA法を施行し、31例(75.6%)にK-ras遺伝子突然変異を認めるという結果を得た。今後は、残りの31例のK-ras遺伝子突然変異の検索を行い、変異陽性例においてはさらにリンパ節でのK-ras遺伝子突然変異の検索を行う予定としている。
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