研究概要 |
本研究は,原発性および転移性肝癌に対するマイクロ波凝固療法(MCT)における作用機序に関する基礎的検討をおこなうことを目的とする.MCTは現在臨床において,原発性肝細胞癌の原発巣や肝内転移巣あるいは転移性肝癌に対する治療の目的で施行されているが,その効果発現機構に関しては未だ不明な点も多く,本研究ではその機序として,アポトーシスの関与に着目し動物実験による研究を行った. 初年度は,内視鏡用モノポーラ型針状電極を使用してラット正常肝に対してマイクロ波凝固を施行し,MCT実験モデルを完成させることができた.凝固条件は30W30秒間の凝固および10秒間の解離とし,この治療条件下では,電極から3mmの組織において平均54.5℃,5mmでは44.0℃に組織温度が上昇することを確認した. 2年目である本年度はこの動物モデルを使用して実験を行い,MCT直後から12時間後まで,経時的に組織障害領域が拡大することが確認された.この機序として,肝腫瘍組織内のTUNEL陽性細胞の増加,電気泳動におけるラダー形成,およびアポトーシス反応の主要な酵素であるカスパーゼ3酵素活性の上昇が認められたことから,この組織障害領域の拡大に,マイクロ波凝固に伴う熱刺激により誘導されたアポトーシスの機序が関与することが示唆された.さらに,アポトーシスに対する生体の防御機構として,熱ショック蛋白(HSP)が産生され,本蛋白が組織障害領域の拡大を抑制することを確認した.これらの研究結果は学会にて発表し,現在,論文投稿中である. 今後最終年度には,腫瘍に対するマイクロ波凝固療法の直接の効果に加えて,本治療が肝内遺残腫瘍の増殖に及ぼす影響について検討を加える予定で,現在研究が進行中である.
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