小腸組織に予め熱ショック蛋白(hsp-70)を誘導しておくと、冷保存傷害が軽減することを、これまで見出してきた。そこで、本研究では、この冷保存傷害抵抗性獲得機序を、培養小腸粘膜細胞(IEC-18)を用いて検討した。まず、IEC-18細胞を対象とし、予め温熱刺激(43℃、30分)してhspを誘導した群(Group1)と、非加温群(37℃、30分)(Group2)とを作製した。University of Wisconsin(UW)液で24時間冷保存後、再度37℃で2時間培養した際の傷害程度と24時間培養後のアポトーシスの程度を、それぞれ比較検討した。 その結果、(1)抗hsp-70NT22抗体を用いて、冷保存後のhspの発現を検討したところ、Group2に比べGroup1で増強していた。また、Group1における、hspの発現は、保存前に比べ冷保存後に軽度増強した。(2)細胞傷害性の程度をHE染色で調べたところ、Group1ではGroup2に比べ軽減していた。(3)MTT法で解析した細胞生存率も、Group2に比べGroup1で高かった。(4)アポトーシスの程度をDNA-1adderで調べたところ、Group2に比べGroup1で軽減していた。(5)LDHの放出量は、Group1に比べGroup2で多かった。 以上の結果から、予めhspを誘導しておくと、IEC-18細胞に冷保存傷害抵抗性が惹起されることが明らかになった。さらに、IEC-18細胞の冷保存傷害抵抗性獲得機序として、hsp誘導によるアポトーシスの抑制が示唆された。
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