臨床研究 1)胃癌の末梢血中のムチン(STN)の発現:末梢血中のムチンの産生(STN抗原の発現)は、色々な臨床病理所見と関連性を持ち、しかも治療成績不良の原因の一つになっている可能性がある。2)末梢血中と腫瘍近傍の環流血中のムチン(STN)の発現と免疫能:末梢血と還流中のSTNの発現率に差は無く、免疫パラメーターも末梢血と還流血では差が無かったが、STNの発現に一致して、CD4/8比の低下が認められた。3)末梢血中および還流血中のムチン(STN)の発現とサイトカイン:STNをはじめとする腫瘍抗原の発現例では、細胞内サイトカインをはじめとする免疫能が低下していることが、予想されたが、有意な差は認めなかった。4)胃癌組織におけるムチン(STN)の発現:癌細胞におけるSTNの発現は、癌の深達度と比例して高率となった。発現の形態は、細胞質内に約半数が発現し、その強度はあまり強くない症例が多くを占めた。5)癌および周囲線維芽細胞におけるbFGFとbFGFRの発現:癌組織および周囲線維芽細胞組織のおけるbFGFとbFGFRの発現は、差が無かった。未分化型においては、両者の関係がある可能性が認めらた。6)腹膜播種巣のSTNの発現と周囲線維芽細胞におけるbFGFとbFGFRの発現の関連性:腹膜播種性転移巣もSTNの発現は主病巣と同じで、転移部位での線維芽細胞の反応も原発巣周囲のそれと変化が無い。 実験研究 1)腹膜中皮と胃癌培養細胞の接着能:癌細胞が腹膜中皮細胞への接着する過程においては、ムチンの関与(接着を促進させる働き)は、STKM-1を除くと、少ないものと考えられた。また、STKM-1も有意な変化を示さなかった。2)癌細胞の腹膜間質への浸潤能とムチン:癌細胞が腹膜間質組織に浸潤する過程において、腹膜中皮細胞は、防御的な働きをしていた。腹膜間質にある線維芽細胞は癌の浸潤を促進した。ムチンの浸潤への関与は、明らかに出来なかった。
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