研究概要 |
<目的>肝細胞癌(肺癌)の再発には多中心性発癌(MC)と原発巣からの転移(IM)が含まれるが、従来は転移を念頭におき"再発"として一括されてきた。今回、本研究により両者を鑑別した上でIMの危険因子を明らかにした。さらに再発予防のためのTAIの治療成績を検討した。 <対象と方法>1.単結節型肝癌の治癒切除157例を対象とし、再発巣がIMかMCかを病理組織学的、分子生物学的(HBV-DNA組み込み、PGK遺伝子のheterogeneity、p53geneの変異)に判定した。2.転移再発の危険因子陽性と判断された治癒切除例に対して術後ADR、MMC,lipiodolを用いて6ケ月ごとに計4回TAIを施行した。<結果>1.再発パターン;再発は74例で肝外再発が11例、肝内再発のみが63例であった。再発巣の組織を採取した43例中、MCが18例、IMが17例、判定不能が8例であった。病理組織学的判定が29例、分子生物学的手法でのみ判定可能が6例であった。IMの危険因子;IMと無再発例とを比較した単変量解析の結果、生存率には臨床病期、組織学的分化度、im、vp、fc-infが、再発率にはim、vpが有意であった(p<0.05)。2.予防的TAI:対象;fc-inf,im vpのいずれか陽性のStageI-III症例に施行した。効果;TAI施行群(n=31)の2年と5年累積生存率は各々90.2%、64.5%、残肝無再発率は各々67.1%、24.4%で非施行群(n=29)と比べて良好であった(p<0.05)。<結論>1.単結節型肝癌の治癒切除後の再発率は高く、その再発腫瘍の49%がIMであった。2.IMに限った再発の危険因子はvp,imであった。3.予防的TAIはIM再発を防止するとともに生存率を延長させる有効な術後補助化学療法と考えられた。
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