研究概要 |
<目的>肝細胞癌(肝癌)の再発には原発巣からの転移(IM)と多中心性発癌(MC)がある。肝内再発をIMとMCに分類し臨床的特徴を明らかにすることを目的とした。<対象と方法>被膜浸潤と脈管侵襲が陰性で最大径5cm以下の治癒切除した単発肝癌は110例であった。再発は45例で(肝外が7例、肝内が38例)肝内再発を採取した29例を対象とした。病理学的診断は全例に行い、分子生物学的には原発巣と再発巣のP53変異パターン(n=14)、HBV-DNA組み込みパターン(n=4)、nm23-H1遺伝子の発現(n=20)を行った。<成績>1.判定可能であった23例中IMが9例(39%)、MCが14例(61%)で、診断手段は組織学的が16例、分子生物学的が7例(P53の変異パターン2例、HBV-DNAの組み込みパターン2例、nm23-H1遺伝子の発現3例)であった。2.臨床背景とIM、MC ; HCVAb陽性例ではIMとMCが各々5/9(56%)と11/14(80%)、肝硬変併存例では5/9(56%)と11/14(80%)(N.S)であった。IMとMCの臨床像;IMとMCの再発までの平均期間は各々26.7か月と13.5か月であった(P<0.05)、単発再発率は各々1/9(11%)と11/14(80%)(P<0.05)、高分化型肝癌の占める割合は0/9と8/14(57%)(P<0.05)、再発時の腫瘍マーカー(AFP, PIVKA II)の上昇例は各々5/6(83%)と3/8(37%)であった(N.S.)。3年累積生存率は14.7%と57.1%(P<0.05)であった。<結論>1.組織学的、分子生物学的に判定可能は23/29(79%)で、そのうち61%がMCであった。2.臨床的にMCと診断されるのは2年目以降の単発再発と高分化型肝癌で、MC切除後の予後はIMより良好であった。
|