消化器癌の予後を左右しているものは転移の有無であることは言うまでもない。とりわけ、転移性肝癌に対する戦略は重要な位置を占めている。各種画像診断機器の進歩により、かなり小さな肝腫瘍も検出されるようになってきたが、目に見える大きさとなってからの治療はその方法が限られている。微小転移巣のうちに検出できれば、血管新生阻害剤等による治療や、抗癌剤の投与でも完治が得られる可能性がある。転移巣の存在の有無を検出する方法として、本研究では転移巣が惹起する血管新生による肝内の動脈・門脈血流量をポジトロンCTを用いてごく初期の段階で検出しようとするものである。 (1)動物における転移性肝癌モデルによる解析を行い、転移群では動脈血流量の増加と門脈血流量の低下が認められた。 (2)臨床における大腸癌患者の肝血流測定をおこなった。肝転移のない進行大腸癌患者を選択し、ポジトロンCTを用いた0-15水静注動態法により肝血流量を測定し、これを対照とした。 (3)さらに、大腸癌肝転移患者の肝血流測定をポジトロンCTを用いた0-15水静注動態法により行った。その結果、肝転移を有する患者の肝動脈血流量は増加し、門脈血流量が低下する傾向が認められた。 以上より、大膓癌肝転移を生じている場合には、肝における動脈血流量の増加と、門脈血流量の低下をきたしており、これをポジトロンCTで測定することによって早期に検出が可能であると考えられた。
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