ラットの肝を2/3(約70%)切除すると、切除後24時間頃から、残存肝の肝実質細胞(以後肝細胞)に顕著な増殖(DNA合成と細胞分裂)が起こる(肝再生).肝細胞の増殖調節には肝非実質細胞がいろいろな面から関与していると考えられている.ニューロテンシン、ニューロペプチドーγ、VIPなどのニューロペプチドは、EGFやTGFαの作用を増強するのみならず、肝非実質細胞に作用して成長因子の分泌を促進する事がわかった(昨年度報告書).今年度は部分肝切除によって、肝非実質細胞の肝細胞増殖への影響がどのように変わるか調べた. 部分肝切除後20〜24時間経った肝臓や、正常の肝臓から肝非実質細胞(NPC)を分離・初代培養し、その培養上清(CM)を初代培養肝細胞に加え、DNA合成に対する効果を調べた.混合NPC分画のCMでは、CM濃度1〜20%全域で部分肝切除NPC-CMによるDNA合成の抑制がみられたが、正常NPC-CMでは抑制の程度はごくわずかだった.一方、内皮細胞に富んだNPC分画のCM(1〜20%)添加では、部分肝切除NPC-CM、正常NPC-CM両方とも1〜10%にわたって肝細胞のDNA合成は促進されたが、促進の程度は部分肝切除NPC-CMの方が正常NPC-CMより低かった. これらの結果から、部分肝切除20〜24時間後(DNA合成期)においては、正常肝に較べ、NPCによる成長促進因子の分泌低下、或いは阻害因子の分泌増加があると考えられた.さらに、NPC分画の中では、内皮細胞が多いと成長促進因子が、他のNPCが多いと阻害因子が分泌されていることが示唆された.促進因子や抑制因子を分泌する細胞の同定は今後さらに進める必要がある.
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