本研究の目的は、肝再生においてニューロペプチドがどのように関与しているのかについて多方面から調べることである. 1.生理的に存在するニューロペプチドや消化管ホルモンについて検索した結果、膵ポリペプチドとセクレチンは、初代培養において、EGFによる成熟ラット肝細胞のDNA合成を増強した.両ペプチドとも単独ではほとんど効果が無いのでEGF、TGFαのようなcompletemitogenの作用を増強する新たなco-mitogenといえる. 2.肝は肝細胞と非実質細胞(NPC)から成り立っている.正常ラット肝のNPCから内皮細胞を分離し培養した上清は、単独では効果が小さいが、EGFによるDNA合成を大きく増強した.内皮細胞からのEGF作用増強因子の分泌が示唆された. 3.部分肝切除後(20-24時間)、NPCを分離し培養して得られた上清は、正常肝より分離して得られたNPCの培養上清に比べDNA合成を抑制した.部分肝切除後DNA合成の盛んな時期に、NPCから分泌される肝細胞増殖抑制物質が増加するか(または、同時に)、促進物質が減少することが示唆された. 4.部分肝切除後、動員されたニューロペプチド・消化管ホルモンはcompletemitogenの作用を増強したり、非実質細胞に作用して肝細胞増殖調節物質を分泌することにより、肝細胞増殖(肝再生)の調節に関与していると考えられる.
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