重症急性膵炎臨床例の多くはアルコール性であり、慢性膵炎の急性増悪(いわゆるacute on chronic pancreatitis)として発症することが多い。膵組織慢性変化や膵内外分泌機能低下がみられる膵での急性増悪時の膵組織像や全身反応は、正常膵に発生した急性膵炎と比べ差異を認める可能性がある。また二次性糖尿病を伴う慢性膵炎では急性発作時に感染症合併の危険性が高いことが推察される。本研究は急性膵炎時の感染症合併(特にmicrobial translocation)におよぼす慢性膵障害の影響を明らかにするために行った。 Wistarラットに予め4週前にストレプトゾトシン45mg/kgを腹腔内投与し糖尿病を誘導した。糖尿病ラットと無処置ラット(対照群)に、10%タウロコール酸0.5mlを膵管内注入し急性壊死性膵炎を惹起した。2時間後に解剖し腸間膜リンパ節、肝、肺、大動脈血を採取した。糖尿病ラットでは腸間膜リンパ節4/5、肝4/5、肺2/5に細菌が認められた。動脈血中エンドトキシンは80.4±2.0pg/ml、β-グルカンは54.7±9.8pg/mlであった。いずれも対照群と比べ高度の変化であった。 糖尿病ラットでは非糖尿病ラットと比べ、急性膵炎時にはmicrobial translocationが発生しやすく高度な敗血症を合併しやすいことが示唆された。
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