研究概要 |
HGFに関してはそのcDNAを中村敏一博士(大阪大学医学部、腫瘍医学部門、腫瘍生化学)より供与いていただき、斉藤泉博士(東京大学医科学研究所、遺伝子解析センター)よりいただいたadenovirus vectorに組み入れ、HGFのadenovirus vector(AxHGF)を作成し、Hela細胞に遺伝子導入したところ、培養上清中に1000-3000ng/mlの濃度のHGFを検出し、その上清をヒト臍帯静脈内皮細胞に加えると内皮細胞に対する増殖効果がみられ、またラット肝細胞に対する活性酸素傷害の抑制効果もみられて、HGF遺伝子導入により産生されるHGFの活性を確認した。次に、293細胞でAxHGFを増殖させ、2回の塩化セシウム密度勾配超遠心法で濃縮し、Dimethylnitrosoamine(DMN)の腹腔内投与で作成した肝硬変ラットに投与したところ、肝障害に基づく線維化などの組織学的変化の改善、AST,ALTなどの肝逸脱酵素の低下、LDHの有意な低下がみられた。また、AxHGFを投与して3日目のラットに部分肝温虚血再潅流傷害を加えたところ、コントロール群に比べ、障害の改善が観察された。 脾摘後脾自家移植に対する効果をラットを用いて観察したが、血管新生の増加などは確認できず、実験法、評価法の再検討が必要と思われた。 また、ヒトインスリン遺伝子のadenovirus vector(AxIns)を作製して糖尿病ラットの肝切除モデルに遺伝子導入したところ、肝再生促進効果、術後の体重増加、残肝重量の増加がみられた。さらに、イヌで膵金摘モデルを作製し、AxInsを投与し、インスリンの皮下投与を行わなくても平均約30日間生存させることができ、免疫抑制剤FK506を用いることにより、インスリン遺伝子発現を増加させ、延長させることができ、生存期間も延長した。
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