研究概要 |
我々は幽門輪温存膵頭十二指腸切除術後における栄養管理として,経腸栄養と経静脈栄養のどちらが優れているかを,サイトカインの変動による臨床比較試験で検討した.術後栄養管理方法の決定は幽門輪温存膵頭十二指腸切除直後に,封筒法により経腸栄養(経腸栄養群)か経静脈栄養(経静脈栄養群)かを決めた.経腸栄養群の場合には,再建時に挙上空腸の盲端から8Fr.の経腸栄養チューブを挙上空腸内に挿入した.経静脈栄養群の場合には,鎖骨下静脈からIVHカテーテルを挿入留置した.血中サイトカイン検査(IL-6,IL-8)は,術前,術後1日目,術後8日目,術後15日目,術後22日目に施行した.平成11年度に幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した症例は15例であり,このうち経腸栄養群は8例,経静脈栄養群は7例であった.経腸栄養群の平均血中IL-6値(pg/ml)は,術前3.5,術後1日目42.9,術後8日目31.7,術後15日目20.8,術後22日目16.4であった.経腸栄養群では,手術前値と比較して術後は有意(p<0.05)に高値を示し高サイトカイン状態であった.一方,経静脈栄養群における平均血中IL-6値(pg/ml)は,術前5.6,術後1日目66.9,術後8日目37.0,術後15日目21.8,術後22日目15.6であった.経静脈栄養群でも,術前値と比較して術後は有意(p<0.05)に高値を示した.しかしながら,経腸栄養群と経静脈栄養群との術前後の比較検討では,症例が少ないこともあって有為差を認めなかった.今年度はさらに症例を追加して検討する予定である.
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