研究概要 |
過大な侵襲である食道癌手術で抗炎症作用を有する可溶性TNFレセプターの生体防御反応および合併症発生えの関与について検討した。術後、可溶性TNFレセプター(sTNF-R55、sTNF-R75)は手術直後から術前の約2倍に上昇し、以後高値を持続した。レセプターの上昇はインターロイキン-6と有意に相関を示したが、TNF-αやインターロイキン-8とは相関が認められなかった。可溶性TNFレセプターは好中球エラスターゼとも相関を示した。しかし、エラスターゼは術後高値を持続したのに対し、マトリツクスメタロプロテイナーゼ-9(MMP-9)は、術直後のみ上昇し以後低下した。細胞表面のレセプターは、蛋白分解酵素(proteinases)により遊離されることが報告され、術後の可溶性TNFレセプターの上昇はインターロイキン-6により誘導さわるプロテアーゼに制御されることが示された。さらに、敗血症症例では、TNF-α,可溶性TNFレセプターともに非合併症症例に比べ有意に高値を示した。しかし、可溶性TNFレセプター/TNF-α比は、非合併症症例の約800に比べ敗血症症例で150と有意に低下した。TNF-αの作用を中和するためには約300倍以上の濃度の可溶性レセプターを必要とすると報告され、可溶性TNFレセプター蛋白の投与は敗血症の予防ばかりでなく治療に有用であると考えられた。以上の結果は侵襲に対する生体防御反応および合併症發症の機序の解明、さらにその治療を可能にする。主に好中球により産生されるプロテアーゼは抗炎症作用を持つ接着分子の可溶化ばかりでなく、接着分子を介して血管外に遊走し直接細胞障害に働くことから、今後好中球の括性化と接着分子発現の機序の解明とその制御が望まれる。
|