1)生理学的検査の方法論的確立 直腸肛門機能の客観的評価に必要な内圧検査と解剖学的評価に用いるdefecographyの設備は整い、手技も安定し一定の検査値を得ることができるようになった。評価は手術前、手術後で骨格筋のトレーニングを行う前後、さらに人工肛門を閉鎖した後に行っている。具体的には、内圧検査では肛門内圧、直腸肛門反射、直腸感覚を測定するとともに、電気刺激装置を用いて肛門粘膜の刺激閾値も評価している。解剖学的評価ではdefecographyで直腸肛門角、肛門管長等を指標として測定した。 2)術式の確立と対象患者における術前の精神的評価 平成15年2月までに直腸癌に対するこの新しい手術を8例に施行した。また同様の手技を便失禁の患者に対しても4例施行した。これら12例における手術はいずれも予定どおり施行することができ手技の上では安定して行えるようになった。また対象となる直腸癌患者にあらかじめインフォームドコンセントを行い、手術の意義を十分に理解して頂いたうえで、施行している。また、この手術の対象となりうる患者の精神的評価をするため、直腸癌患者で過去に腹会陰式直腸切断術を受けて腹部に人工肛門を有している患者と、直腸癌の術前患者を対象として面談によるアンケート調査を行い、結果を得た。 3)移植大腿薄筋弁の電気刺激による肛門再建術前後の肛門機能の評価 新しい肛門再建術の前後において生理学的検査、解剖学的検査および臨床的評価を行ってきた。結果として骨格筋刺激装置によるトレーニングは肛門機能の改善に重要な働きを持つことを再確認した。またこの結果を低位前方切除術あるいは直腸切断術を施行された患者と比較検討してきた。
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