研究課題
肝細胞癌(肝癌)切除後の再発には、癌病巣の組織学的遺残が原因と考えられる遺残再発と肝炎ウイルスの持続感染により新たに異時的に発生する異時性発癌による再発が存在することは良く知られた事実である。過去の研究において、単変量解析によりC型肝炎合併例はB型肝炎合併例に比べ異時性発癌頻度の高いことが判明していたが、他の諸因子とあわせて、炎症の程度が真に独立した再発因子であるかどうかの確証はなかった。そこで、肉眼的に完全に切除された肝癌切除例を対象に、無再発期間と術前諸因子(宿主因子、腫瘍因子、肝機能、非癌部肝組織、手術因子)の関係を多変量解析(比例ハザードモデル)を用いて分析した。非癌部肝組織は、病理組織像以外にKnode1等の方法に準拠し、炎症活動度と線維化の程度をHAI scoreで定量的に評価した。多変量解析で最終選択された独立因子は年齢、ICG停滞率(肝予備能因子)、腫瘍因子として発育形態(膨張性、浸潤性)と組織学的門脈侵襲、非癌部因子として肝炎活動度を表すHAI scoreであった。すなわち、より若年で肝予備能が良好な宿主において、膨張型に発育した組織学的門脈侵襲のない癌で、かつ肝炎症活動度の低い症例が長期無再発を期待できることが判明した。
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