研究概要 |
食道癌集学的治療の一つとして化学療法,放射線療法,化学放射線療法が施行されているが各治療法の奏効率とp53癌抑制遺伝子変異との関連については臨床的評価が未知である.本研究の初年度研究として術前治療が行われ手術によって食道癌が切除されその奏効度が組織学的に確定した115例の食道癌術前治療後手術症例について,治療前の内視鏡生検標本の免疫組織染色からp53癌抑制遺伝子変異と治療効果の関連を検討した. 【方法】術前化学療法68例,術前化学放射線療法30例,術前放射線療法17例について以下の検討を行った. 1.組織学的奏効率の確定(食道癌取り扱い規約によるGrade分類に準拠) 2.免疫組織染色から見たp53癌抑制遺伝子変異と治療効果の検討 【結果】 1.術前化学療法,術前化学放射線療法,術前放射線療法のGrade2以上の奏効率はそれぞれ11.8%,86.7%,47.1%でありp<0.00001の有意差をもって化学放射線療法の治療効果がすぐれており,化学療法の奏効率は低率であった. 2.異常p53蛋白発現と術前治療効果の発現の関連を検討すると,化学療法でのみ組織学的奏効率はp53癌抑制遺伝子変異の無い場合20.0%であり,ある場合の5.6%に比べてp=0.034で有意差を認めた. 3.化学放射線療法,放射線療法では治療効果とp53癌抑制遺伝子のstatusに全く関連は認められなかった. 次年度はp53癌抑制遺伝子の全coding sequenceの解析から治療効果との関連を解析する.
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