研究概要 |
転移性肝癌における、癌転移を制御するメカニズムを、肝類洞リンパ球のT細胞、NK細胞から分析し、IL2の受容体などの発現を解析し、IL2などを利用した免疫化学療法の可能性を探ることが目的であった。転移性肝癌手術例で、切除肝より肝内リンパ球を分離し、MTTアッセイなどで各リンパ球分画における活性を解析した。また同時に末梢血リンパ球(PBL)の機能変化をミトコンドリアの膜電位(MMP)の変化,細胞のアポトーシスは細胞膜損傷により解析した。具体的には、肝臓切除後第1,3,7病日に採血。リンパ球を分離、シアン色素DiOC_6(3)、抗リンパ球表面抗原抗体(CD56,CD3)を用い、NK細胞およびT細胞分画aにおけるMMPをフローサイトメトリー法により測定した。また採血後24時間培養したリンパ球のアポトーシスはAnnexin Vを用い、フローサイトメトリー法により解析した。結果:大膓癌肝転移例で1亜区域以上の肝切除を施行した25例(H群)、腹腔鏡下胆嚢摘出術施行例(LC群)7例と健常者コントロール10例の計22例。H群において、第1,3病日でのリンパ球のMMPが有意に低下した(それぞれ術前値の62.7%、91.5%)。それらの低下はCD56陽性細胞(NK細胞分画)に認められ、CD3陽性細胞(T細胞分画)では認めなかった。LC群にてはMMPの変化は有意ではなかった(第1病日97.7%第3病日97.3%)。またH群においては24時間後にアポトーシスが認められた。以上より、肝臓切除後には理由は不明であるが、NK細胞のミトコンドリア機能が破綻し、アポトーシスに陥ることが示唆された。転移性肝癌の切除後の免疫療法を考える際には、このような手術侵襲による免疫機能の変化を考慮すべきであると考えられた。
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