本年度は分離肺潅流法の安全性の確立めざした実験を施行した。【対象と方法】雑種成犬の入手が社会的事情により不可能となり、代替動物としてニュージーランド雌ウサギを用いた。実験動物に硫酸アトロピン0.25mgを筋注しペントバルビタールの静注により麻酔導入した。気管切開を行い臭化パンクロニウム0.1mg/kgを静注して非動化し、人工呼吸器に接続した。麻酔中は塩酸ケタミンの持続静注および臭化パンクロニウムとジアゼパムを適宜静注して非動化した。実験動物を右側臥位にし、後側方開胸にて胸腔内に到達し、左肺動脈幹、肺静脈の中枢側を鉗子で遮断する。左肺動脈幹にカニューレーションし灌流液の注入口とし、肺静脈の一部を切開し流出口とした。この実験系に対し次の各群を作製した。(1)37℃リンゲル液で30分間灌流(n=5)、(2)37℃蒸留水で30分間灌流(n=5)、(3)42℃リンゲル液で30分間灌流(n=5)。上記の各群に対して以下の項目を測定、検討した。(1)分離肺灌流前後の経時的な血行動態、肺表面組織血流量、動脈血ガス分析、血液生化学検査。(2)実験終了時に犠牲屠殺し、灌流肺および対側肺の病理組織。【結果】分離肺灌流前後を比較して血行動態、肺表面組織血流量、動脈血ガス分析、血液生化学検査値に有意差は認めなかったまた、病理組織学的にも灌流肺、外側肺に肺水腫等の障害を示唆する所見は認めなかった。以上より、分離肺灌流法の安全性の確立されたものと考えられ、転移性肺腫瘍モデルを用いた基礎的研究を進行中である。
|