研究概要 |
転移性肺腫瘍に対する分離肺潅流法の安全性の確立および各種薬剤投与による治療効果の検討を実験動物を用いて行った。【対象と方法】実験動物としてニュージーランド雌ウサギおよびラットを用いた。実験動物は全身麻酔,人工呼吸器管理とした。実験動物を右側臥位にし、後側方開胸にて胸腔内に到達し、左肺動脈幹、肺静脈の中枢側を鉗子で遮断する。左肺動脈幹にカニュレーションし灌流液の注入口とし、肺静脈の一部を切開し流出口とした。ウサギを用いた実験では次の各群を作製した。(1)37℃リンゲル液で30分間灌流(n=5)、(2)37℃蒸留水で30分間灌流(n=5)、(3)42℃リンゲル液で30分間灌流(n=5)。上記の各群に対して以下の項目を測定、検討した。(1)分離肺灌流前後の経時的な血行動態、肺表面組織血流量、動脈血ガス分析、血液生化学検査。(2)実験終了時に犠牲屠殺し、灌流肺および対側肺の病理組織。ラットを用いた実験では肉腫細胞をラットに静注し、7日後にシスプラチン、TNP-470、温熱にて分離肺灌流を行い(各々n=6)、14日後に屠殺して灌流側肺、対側肺の腫瘍細胞数および副作用を検討した。【結果】ウサギを用いた実験では分離肺灌流前後を比較して血行動態、肺表面組織血流量、動脈血ガス分析、血液生化学検査値に有意差は認めなかった。また、病理組織学的にも灌流肺、対側肺に肺水腫等の肺の障害を示唆する所見は認めなかった。ラットの実験は,実験データの統計学的解析を施行中である。【まとめおよび今後の課題】分離肺潅流法の安全性は確立された。有効性が確立されれば患者の同意のもとに人に対しての治験を開始する予定である。
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