研究概要 |
転移性肺腫瘍に対する分離肺潅流法の安全性の確立および薬剤投与による治療効果の検討を実験動物を用いて行った。【対象と方法】実験動物としてニュージーランド雌ウサギおよびラットを用いた。実験動物は全身麻酔、人工呼吸器管理とした。実験動物を右側臥位にし、後側方開胸にて左胸腔内に到達し、左肺動脈幹、肺静脈の中枢側を鉗子で遮断する。左肺動脈幹にカニュレーションし灌流液の注入口とし、肺静脈の一部を切開し流出口とした。ウサギを用いた実験では次の各群を作製した。(1)37℃リンゲル液で30分間灌流(n=6)、(2)37℃,蒸留水で30分間灌流(n=6)、(3)42℃リンゲル液で30分間灌流(n=6)。上記の各群に対して、(1)分離肺灌流前後の経時的な血行動態、肺表面組織血流量、動脈血ガス分析、(2)再灌流後2時間目の灌流肺および対側肺の病理組織を検討した。ラットを用いた実験ではシスプラチン(0.8mg/kg、1.6mg/kg、3.2mg/kg)十リンゲル液(10ml)で10分間灌流したのちリンゲル液(5m1)で5分間灌流した。各濃度につき6匹作製し、術後2週間の生死を検討した。【結果】ウサギを用いた実験では分離肺灌流前後を比較して各群内および各群間において血圧、肺表面組織血流量、動脈血酸素分圧の有意差な変動は認めなかった。病理組織学的にも灌流肺、対側肺に肺水腫等の肺障害を示唆する所見は認めなかった。ラットを用いた実験ではシスプラチン0.8mg/kg、1.6mg/kgの各々の濃度で分離肺灌流した実験動物は全例が術後2週間生存した。シスプラチン3.2mg/kgで分離肺灌流した実験動物は3例が術後2週間以内に死亡し、3例が術後2週間生存した。【まとめおよび今後の課題】ウサギおよびラットを用いた分離肺潅流の急性および慢性実験により、分離肺潅流療法の安全性が示された。今後は患者の同意のもとに人に対しての治験を開始したい。
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