研究概要 |
1)摘出肺の固定:家兎左肺を評価対象として、肺保存液で血液をflush out(Nitroprusside添加、Nitric Oxide吸入)した後、4%パラホルムアルデハイド、0.325%グルタールアルデハイド混合液での灌流固定を行った。固定が終了した時点で再び肺保存液を灌流し固定液の洗い流しを行った。 2)体外灌流モデル:摘出固定肺8検体のうち3検体は各々1,3,4時間目で血液の灌流が不可能となり、予定した5時間の灌流が終了したものは5検体であった。血液灌流開始時のD-PO_2は2検体を除いて100torr前後で、D-PCO_2は12〜20torrであった。 3)生体内灌流実験:同様の固定液を用いて成犬左肺を生体内で固定した。固定に際しては、NP添加肺保存液で血液をflush outし、NO吸入を施行した。右側も換気する両肺換気群では4例が5時間まで生存し、残る1例も3時間まで測定が可能であった。固定肺換気群5例の内、2例は右肺結紮直後に、3例は2,3,3時間経過後に死亡した。 今回の結果は、これまでの無処置例やNP単独使用例と比較すると、NO吸入を追加することにより機能の改善が得られている。本研究の最終目標は保存肺に代わる固定肺を作製することであり、flush液へのNP添加、NO吸入などの工夫によって、ガス交換能はまだ改善される可能性があると思われるが、現時点では極めて困難であり、固定肺にどの程度の機能が期待可能かを中心に検討を進めた。尚、移植への応用に際しては肺の抗原性を低減させることが必要と思われ、免疫応答についても研究を開始した。
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