原発性肺癌におけるホリシアル酸およびその転移酵素の発現の意義を検討し、以下の点を明らかにした 1、非小細胞肺癌においてホリシアル酸発現が病期の進展、特にリンハ節転移や遠隔転移の成立に大きな役割を果たしていることを示したまたこのような非小細胞肺癌細胞表面に発現しているホリシアル酸は、通常ホリシアル酸付加が行われる神経細胞接着分子NCAMとは異なった分子上にその発現が見られる可能性を明らかにした 2、ホリシアル酸発現に関わるホリシアル酸転移酵素はこれまでにPSTとSTXの2つがクローニングされているが、このうちPSTは正常肺および肺癌組織中に恒常的にその遺伝子発現が見られるのに対し、STXの遺伝子発現は、肺癌組織中、それも進行期肺癌組織中に特異的に認められることを明らかにした. 3、非小細胞肺癌切除例の検討において、ホリシアル酸の発現は予後不良を規定する有意な予後因子であることも明らかにした 4、小細胞肺癌においてはホリシアル酸の発現は大部分の症例で認められ、一方、同じ神経内分泌腫瘍の範疇に属するカルチノイド腫瘍等の低悪性度腫瘍ではその発現は殆ど認められなかった.更に、小細胞肺癌においても非小細胞肺癌におけるのと同様、ホリシアル酸発現は予後不良を規定する有意な因子であった.以上の知見は、原発性肺癌においてホリシアル酸はその転移能と密接に関与し、ホリシアル酸やその転移酵素の発現が予後因子となりうると同時に、原発性肺癌治療における新たな分子標的となりうる可能性を示唆した
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