研究課題
(方法)350gの雄SDラットを開胸後、大動脈弓を露出、左右鎖骨下動脈および腕頭動脈をtapingした後、右総頚動脈を露出し、cannulationを行った。大動脈弓3分枝をsnare、全脳虚血とし4℃に冷却した核酸導入液2mlを右総頚動脈から注入した。核酸導入効率を高めるためHVJ-lipospme法を用いた。20分間の全脳虚血後、遮断解除し脳血流を再開、麻酔覚醒させた。(実験1)FITCラベルを行ったoligonucleotideを含んだHVJ-lipospmeを右総頚動脈より注入し、再灌流後1時間で脳を摘出し、蛍光顕微鏡で観察した。(実験2)NF kappa B decoy 200μgを含むHVJ-liposomeを作成し、右総頚動脈より注入、7日後に犠牲死させた。controlとしてscrambled decoy 200μgを含むHVJ-liposomeを注入した。これら脳組織をHE染色、TUNEL染色、microtuble associated proteinに対する免疫染色を行い、海馬CA1領域における神経細胞の性状を検討した。(結果)(実験1)血管内皮、海馬、大脳皮質の神経細胞の核に蛍光が認められ、NFkB decoyが脳実質へも導入された。(実験2)HE染色では、control群では、海馬CA1領域の神経細胞の核の濃縮、脱落が認められたが、decoy群では、海馬CA1領域の神経細胞の核はよく保たれていた。TUNEL染色陽性核の割合はcontrol群:41.2±19.3%、decoy群:12.0±14.8%であり、有意にdecoy群で低値であり、MAP免疫染色において、陽性細胞数はcontrol群:58.3±27.1%、decoy群:109±24.5%であり、有意にdecoy群で高値であった。(結語)ラット全脳虚血モデルにおいて、NFkB decoyを脳実質内に導入することにより、海馬CA1領域の神経細胞の障害が軽減された。以上より、NFkB decoyは、循環停止の際の脳神経細胞保護薬としての可能性が考えられた。