研究概要 |
(1)過分極型心筋保護液の開発 過分極型心筋保護液としてアデノシン添加心筋保護液の心保護効果を成熟日本白兎による心灌流モデルにて検討した。アデノシン付加心筋保護液による心機能回復率(左室圧回復率)はコントロールに比し14±3%と良好であった。次に月齢36ヶ月以上の高齢兎(ヒト60才相当)を用い同様に心機能回復率を検討したところ、コントロールでは左室圧回復率60±5%と有意に低下したがアデノシン付加心筋保護液では22±3%と心機能回復率は有意に改善し、過分極型心筋保護液の心保護効果は高齢心で増強した。小動物実験用の人工心肺装置を装着し体外循環下に、in vivoにて上記の心筋保護液を注入した後45分間の大動脈遮断を行い、再灌流2時間後の心機能回復率を検討したところコントロールに比べアデノシン付加心筋保護液では心機能回復率は有意(25±5%)に良好であった。TUNEL法による高齢心筋細胞アポトーシス発現率はコントロール(32±7%)に対しアデノシン付加心筋保護液では有意に低下(23±5%)した。 (2)カルシュニューリン阻害剤による心筋アポトーシス抑制効果の検討 カルシュニューリン阻害剤(FK-506前投与)による心機能回復率(左室圧回復率)はコントロールに比し20±4%,と良好であった。またTUNEL陽性細胞出現率はコントロールに比べ45%減少しアポトーシス抑制効果が得られた。次に高齢兎を用い同様に心機能回復率を検討したところ、FK-506前投与では17±3%と心機能回復率は有意に改善し、TUNEL陽性細胞出現率はコントロール(32±7%)に対しFK-506投与にて有意に改善し、FK-506の心筋細胞アポトーシス抑制効果が示唆された。 以上より高齢心筋の虚血再灌流障害にはアポトーシスが関与しており過分極型心筋保護液とカルシュニューリン阻害剤の相乗効果が有用であると考えられる。
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