平成11年度は樹状細胞(以下DC)を利用した新しい癌免疫療法を確立するために、肺癌細胞株に対し、DCを用いて特異的細胞障害性T細胞(以下CTL)の誘導を試みた。 1.ヒト末梢血におけるDCの誘導 a.特異的免疫応答を誘導するために、まず肺癌細胞株(PC14)とHLAのマッチングしたHLA-A2陽性健常人を選別して、末梢血単核球を分離した。 b.プラスチックシャーレ付着細胞を分離して、GM-CSF1000U/mL、IL-4 1000U/mLを添加して5日間培養後、tumor lysateとTNFα 1000U/mLを加えてさらに2日間培養してDCを誘導した。 2.ヒト肺癌細胞株(PC14)に対するCTLの誘導 a.得られたDCと先に得られた単核球のうち浮遊細胞をとして分離したリンパ球を固相化CD3シャーレ、IL-2 50U/mL添加培地で混合培養した。 b.細胞は28日間の培養で約100倍に増量し、CTLが誘導された。 3.ヒト肺癌細胞株に対するCTLの抗腫瘍活性 a.CTLの抗腫瘍活性を解析するため、PC14との混合培養を行い、ELISA測定法を用いてγインターフェロンの放出試験をおこなった。 b.DCを利用して誘導したCTLでは、培養上清中に高いγインターフェロン濃度が検出され、その活性はHLA-A2抗体でブロックされた。また、DCを持いない群ではγインターフェロン濃度は有意に低値であった。 以上より、HLAマッチングさせた末梢血より、DCを利用して肺癌細胞株に対するCTLが誘導され、高い抗腫瘍活性を示した。同様の手法で癌免疫療法への応用が期待される。
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