1.樹状細胞(以下DC)を用いた特異的細胞障害性T細胞(以下CTL)の誘導を試みた。 1)ヒト末梢血由来DCを用いた肺癌細胞株(PC14)に対するCTLの誘導 PC14とHLAのマッチングした健常人を選別して、末梢血単核球を分離した。プラスチック付着細胞を分離後、GM-CSF1000U/ml、IL-4 1000U/mlを添加して5日間培養し、さらにtumor lysateとTNFα1000U/mlを加えて2日間培養して、DCを誘導した。得られたDCとリンパ球を固相化CD3シャーレ、IL-2 50U/ml添加培地で混合培養した。細胞は28日間の培養で約100倍に増量し、CTLが誘導された。 2)PC14に対するCTLの抗腫瘍活性 PC14との混合培養を行い、ELISA測定法を用いてγインターフェロンの放出試験を行った。DCを利用して誘導されたCTLでは培養上清中に高いγインターフェロン濃度が検出され、その活性はHLA抗体でブロックされた。 2.DCはIL-2及びIL-12によって活性化されるため、肺癌患者の腫瘍内リンパ球においてIL-2及びIL-12を分泌するhelper T細胞type1(Th1)の割合を解析した。 1)肺癌患者の腫瘍組織からリンパ球を単離し、フローサイトメトリーによってTh1細胞の割合を解析した。 2)腫瘍内では末梢血と比較してTh1細胞の比率が多く認められた。また、腫瘍径では3cm以下の小型腫瘍で、組織型では扁平上位癌で、Th1の比率が高くDCの活性化に有利であることが示唆された。 3)肺癌再発患者では末梢血のTh1細胞比率が低く、DCの活性化に不利であった。 以上、DCを利用してCTLの誘導が可能であること、肺癌組織内でDCの活性化に有利なTh1細胞が存在することより、DCを用いた癌免疫療法の応用の可能性が示された。
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