ヒト肺癌細胞と胸膜播種モデルを用いてBAI1遺伝子発現アデノウイルスベクター(Ad5BAI1)の胸腔内投与の抗腫瘍効果を検討を検討した結果、期待した程の結果が得られなかった。そこで、転移浸潤に関与していると考えられているヘパラナーゼのアンチセンス・アデノウイルスベクターを作成し、同モデルにおいて抗腫瘍効果を検討することとした。1)ヒト由来ヘパラナーゼcDNAを、順方向および逆方向にE1欠損非増殖性アデノウイルスベクターに組み込み、センス・ベクター(Ad-S/Hep)、アンチセンス・ベクター(Ad-AS/Hep)を構築した。2)ヘパラナーゼ遺伝子の発現は、Ad-AS/Hepの濃度依存性に抑制された。3)ヘパラナーゼの基質であるヘパラン硫酸を含むマトリゲルをもちいたInvasion Assayを行った。Ad-S/Hepを感染させたヘパラナーゼ遺伝子発現A549細胞は、コントロールのA549細胞より浸潤能が増強していたが、Ad-AS/Hepの感染によりその浸潤は有意に抑制された。4)低濃度のAd-S/hepベクターを感染させたA549細胞をヌードマウスの胸腔内に移植する胸膜播種モデルにおいて、Ad-AS/hepベクターを連続3日間胸腔内投与することで播種巣の形成が抑制され、明らかな抗腫瘍活性が認められた。
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