研究概要 |
本年度は平成11年度に行った胸腺におけるdouble positive cellのnegative selection(apoptosis)の解明と関連してpositive selectionの伝達シグナルについての解析を行った。胸腺T細胞のpositive selectionはlow avidityのT cell receptor(TCR)ligationにより引き起こされ、成熟T細胞が生み出される。マウスのpositive selectionを誘導するシグナルとしてprotein kinase C(PKC)の活性化と細胞内Ca2+濃度の上昇が明らかとなっているが、ヒトではいまだ明らかではない。そこでヒト胸腺細胞のpositive selectionにおいてPKCの活性化と細胞内Ca2+濃度の上昇が関与しているかを、PKC activator、phorbol-myristate-acetate(PMA)とcalcium ionophore、ionomycinを使って調べた。ヒト胸腺細胞をPMAとionomycinの組み合わせで20時間培養して、その後24時間mediumのみで培養した時のCD4,CD8,CD3,CD1のphenotypeの変化と細胞増殖能、annexin Vとbcl-2の発現について調べた。ヒト胸腺細胞はmediumのみでの培養と比べ、PMA2ng/mlとionomycin 2μg/mlの組み合わせによる培養でannexin Vの発現が抑制されapoptotic cellが減少しviable cellが増加した。また時間の経過とともにCD4のdown regulationがみられた。PMA/ionomycin処理をした胸腺細胞は培養直後よりCD69を強く発現をしており、また高い細胞増殖能も認められた。sortingしたDP cellでもPMA/ionomycin処理によりbcl-2のup regulationと高い細胞増殖能、CD1のdown regulationがみられた。しかしCD3の発現は変わらずlowのままであった。またPMA/ionomycin処理した胸腺細胞はdexamethasoneにより誘導されるapoptosisに抵抗性を示した。以上の結果からヒトの胸腺細胞においてもPKCの活性化と細胞内Ca2+濃度の上昇がpositive selectionに関与していると考えられる。
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