研究概要 |
重症筋無力症の発症には抗AchR抗体が重要な役割を果たしているが,抗AchR抗体価とMGの重症度とはあまり相関がない。これは,現在臨床で用いられている抗AchR抗体測定法は可溶化したAchRを抗原としており,膜に結合した生理的な状態のAchRを抗原としていないためと考えられる。そこで,膜に結合した状態の生理的な条件で,MG患者のAchRとの反応を検討し,実際にMG患者の体内で病原性のある抗体が解析できると考えられると考えられる。そこで,AchRを発現しているTE671細胞との反応を解析するのであるが,通常の横紋筋肉腫細胞株TE671のAchRは胎児型である。しかし神経支配が完了した成人のAchRはεサブユニットをもった成人型であるので,TE671細胞にεサブユニットのcDNAを導入したTE671ε細胞(OxfordのNewson-Davisより供与)を用いる。これを重症筋無力症患者血清あるいは正常ヒト血清あるいは抗AchRモノクローナル抗体と反応させ,洗浄後FITC標識抗ヒト免疫グロブリンと反応させ,FACSにて解析している。さらに,TE671細胞に結合するMG血清中の抗体が,抗AchR抗体がどうかを確認するために,TE671細胞による吸収実験を行う。まず,MG患者血清をTE671細胞,あるいはコントロールとして線維芽細胞と反応させ,反応後の血清中の抗AchR抗体をラジオイムノアッセイで測定する。また,TE671細胞のAchRが細胞外ドメインを外側に向けた正しいオリエンテーションで挿入されているかを確認するために,AchRの細胞質側に結合することがわかっているモノクローナル抗体(Vincentより供与)とサポニンで膜を透過性にしたTE671細胞をFACSにて解析を行う。
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