ソノクリスタル距離情報の3次元再構築にて新たな右心機能指標を作成し右室自由壁・心室中隔の機能低下が全右心機能に及ぼす影響の統合的解析を目的としたが、多数個ソノクリスタルを用いた実験系の管理が著しく複雑な為簡素化した基礎実験(6ヶのソノクリスタル情報から左心容積を算出し虚血再潅流障害による左心機能障害を評価する)を施行。 【基礎実験】(1)虚血再潅流心モデルでO_2濃度及びL-arginineが再潅流障害に与える効果の検討、(2)多数個ソノクリスタルを用いた実験系に対する習熟。 【基礎実験結果・まとめ】(1)6ヶのクリスタルにより左室容量を正確に計測し得た。(2)虚血再潅流後の心機能は高濃度O_2+L-Arginineにより有意に悪化し低濃度O_2+L-arginineにて改善。 【本実験】多数個のソノクリスタルを用いたシステムは以下の理由で機能しなかった。(1)体外循環離脱後の心機能、特に右心機能が極度に悪化。右室自体を傷害しないように体外循環下に右房切開によりソノクリスタルを埋込んだが、それでも右室への侵襲が大きく右心不全から体外循環の離脱そのものに難渋。(2)右室壁は壁厚が薄くクリスタルの固定が不十分でデータの再現性が欠如。(3)埋め込みのため右房切開が結果として右心室機能に前負荷として直結する右房機能を傷害するという実験モデル上の欠点。 【今後の展開】 不全心における右心機能については数多くの臨床報告を行ってきた。その裏付けの基礎データの蓄積を今回のプロジェクトに期待したが、24ヶ個のソノクリスタルを用いた実験系はうまく機能せず結果的に基礎実験のデータしか発表できなかった。ソノクリスタルを外科的に留置する本法では右心系全体への侵襲が大きく目的とする実験データ(右心室におけるソノクリスタル相互間距離の経時的変化)を得ることが出来無かった。今後は右室容積測定を3次元超音波など無侵襲的に行う方向で研究を続行したい。
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