研究課題/領域番号 |
11671341
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
中村 治彦 東京医科大学, 医学部, 講師 (80183523)
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研究分担者 |
斎藤 誠 東京医科大学, 医学部, 助教授 (30225734)
加藤 治文 東京医科大学, 医学部, 教授 (20074768)
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キーワード | 肺癌 / FISH / 染色体 / 染色体不安定性 |
研究概要 |
HER2(erb-B2)遺伝子の過剰発現は肺癌,特に非小細胞肺癌で頻度が高いといわれてきた。最近、その遺伝子産物であるHER2蛋白に対するモノクローナル抗体(Herceptin)が乳癌のHER2過剰発現例に治療効果を有することがわかり、進行乳癌症例の標準治療のひとつとなりつつある。本年は、肺癌の染色体不安定性(CIN)との関連において乳癌と同様の病態が存在するか否かをHER2遺伝子コピー数のFISHによる解析と、HER2蛋白の免疫組織化学による比較研究によって明らかにした。その結果、HER2遺伝子の肺癌細胞における高度の増幅は稀であり、この点、数10倍の増幅も稀でない乳癌と一線を画することがわかった。増幅が2-3倍の低頻度の症例は40%程度に認めたが、HER2遺伝子が存在する17番染色体のpolysomyに伴うものが多くHER2座位の単独のコピー数増加は極めて稀と考えられた。一方、HER2蛋白は正常な気管支上皮にも軽度に発現しており、肺癌の細胞膜に特異的染色性を認めた場合を陽性と判定すると、非小細胞肺癌の蛋白過剰発現例は約20%であった。HER2コピー数とHER2蛋白の過剰発現の間には統計的に有意な相関は認められなかった。従って肺癌に対するHerceptinによる治療の可能性は、乳癌とはやや異なる遺伝子異常が背景にあることを理解したうえで、臨床試験によって確認されるべきと考えられる。染色体不安定性については54症例の肺癌を解析し、無再発生存率についてfollow-upを継続中であるが、やはりCIN症例の予後が有意に不良となる傾向に変化はみられていない。今後は治療前に採取した検体から再現性のある検査結果を得て、臨床治療に還元する方法を検討する予定である。
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