研究概要 |
平成12年度は基礎的研究を主に施行し、平成13年度に臨床応用した。 1.基礎的研究:動物実験による至適ポリマー、至適細胞数、至適培養期間の探究及び選定を行った。実験動物として子犬を用い、十分な細胞数を得た後、生分解性ポリマー(3×3cm)にin vitroで播種しポリマー上での培養を約一週間継続した。その後、細胞を採取した同一の動物に対して移植手術を行った。移植前日にポリマー上の細胞に対して蛍光色素を用いた細胞の追跡用マーキングを行い播種された細胞と自己細胞との鑑別を試みた。移植3-12ヶ月後に作成,ざれた組織に対して生化学的、生力学的、免疫組織学的検討を行った。生化学検査として、組織中コラーゲン、エラスチン、カルシウム濃度の測定を行い、インストロン張力検査機を用いて作成された組織の最大張力を測定し自己の同じ部位の組織と比較検討した。組織学的には免疫染色の手法を用いて内皮細胞の指標である第八因子を染色すると共に細胞間隙の間質蛋白質を染色し自己組織と比較検討した。同種細胞(allogenic)は拒絶反応の因子を排除できないため、細胞は全て自己(autologous)細胞を用いた。 2.臨床拒用:まず、血管の組織工学から臨床応用した。その結果を記す。自己心膜も5症例例において臨床応用されたが、現在経過観察中である。培養液は1%GPS(29.2mg.mLL-glutamine,10,000units/mL penicillin G sodium, and 10,000g/mL streptomycin.GIBCO BRL-Life Techonologies, grand island, NY)を添加したDulbecco's Modified Eagle Medium(GIBCO BRL-Life Tecnologies, grand island, NY)を使用した。フラスコ内での細胞は分裂、増殖を繰り返し、細胞数は指数関数的に増加した。予備実験より細胞のdoubling time、は24-48時間で、19x106個の細胞を獲得するためには約6週間を要した。生分解性ポリマーは、メッシュ状(porocity=95%air)のPGA(poly-glycolic acid)をシート状のpolyglactinで補強したものを使用した。厚さは約1mmで生体内での分解は約8-10週で完結するようデザインされた。播種する細胞数は1cm2あたり約、100万個とした。約1週間でconfluentの状態とした。ポリマー上での細胞培養7-10日後に細胞/ポリマー構成物を開心術時にパッチあるいは導管として使用した。右心系血管としてで合計19例に臨床応用がなされたが、全例経過良好で、現在までに大きな合併症も認めなかった。(最長2年の追跡期間)今後より長期の成績を追跡する予定である。
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