研究概要 |
ラットグリオーマ細胞株;C6,RG2および癌細胞株;Walker256(W256)におけるビンクリスチン(VCR)耐性腫瘍細胞株は1ng/mlのVCR添加MEMで継代培養することにより確立され,各細胞株における耐性獲得はMTT assayで評価した.VCR無添加のwellの吸光度を基準値(100)として,1μg/mlのVCRを作用させた場合のwellの吸光度を相対値で表し,surviving fractionとして検討した.各腫瘍細胞における野生株のsurviving fractionはRG2が28%,C6が35%,W256が44%であり,RG2が最もVCRに対して感受性が高く,W256は低感受性と判定された.このMTT assayを用いた感受性試験の結果はMDR1 mRNAの高発現細胞株(W256)ほど^<99m>Tc-MIBIの集積が有意に低下し(r<0.01),MDR1 mRNAの低発現細胞株であるRG2における^<99m>Tc-MIBIの集積が高値を示した昨年度の研究結果に一致していた.各腫瘍細胞におけるVCR耐性株のsurviving fractionはRG2が69%,C6が56%,W256が78%といずれも増加し,各耐性株における^<99m>Tc-MIBI集積量(volume distribution)は野生株の6〜45%まで低下した.いずれの耐性株においても野生株と比較してMDR1mRNA発現の増加がRT-PCR法で確認され,P糖蛋白質を介した細胞外輸送による^<99m>Tc-MIBIの細胞内集積の低下が示唆された.これらの耐性株に対して耐性克服薬(ベラパミル,シクロスポリン,FK506)をいずれも5μMの最終濃度で3日間作用させた後に施行したMTT assayではsurviving fractionはRG2が42〜59%,C6が36〜48%,W256が30〜41%まで低下した.各耐性克服薬を5μMの最終濃度で1時間作用させた後の^<99m>Tc-MIBIの集積量は耐性克服薬投与前と比較してRG2が10〜60倍,C6が3〜15倍,W256が20〜80倍まで増加し,耐性克服薬による^<99m>Tc-MIBIの細胞外輸送の抑制が明かとなり,抗腫瘍薬の細胞外輸送阻害に基づく耐性克服効果が示唆された.^<99m>Tc-MIBIは悪性脳腫瘍の化学療法における多剤耐性モニタリングに有用なトレーサとして期待される.
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