神経系におけるXIAPの発現を確認し、神経細胞死を抑制する可能性があるのかを考察する目的でin situ hybridization法で発現部位とレベルを解析した。ラットXIAPcDNAをE18rat brain cDNA libraryよりクローニングした。 in situ hybridizationはS^<35>-labeled cRNA probeを用いて、E19からP56までの成長期別XIAPの発現を解析した。また、脳虚血による発現レベルの変化を調べる目的で、ラットの4VO+hypotensionによる6分間の前脳虚血後の発現の変化を解析した。XIAPの発現はnaturally occurring cell deathの起こる胎仔脳や生後早期では脳に広く分布していた。発現レベルは成獣になっても低下せず、成熟神経細胞でもXIAPが機能していることが示唆された。生後脳では分化の続く小脳顆粒細胞や嗅脳でもっとも高い発現がみられた。6分間の前脳虚血後には24時間で海馬CA1で有意なmRNAの発現増加がみられた。幼若神経細胞におけるXIAPの発現は神経細胞の発生、成長の過程でおこるnaturally occurring cell death と呼ばれるアポトーシスを制御しているものと考えられる。さらに一過性の脳虚血後にmRNAの発現が増加することは、成熟神経細胞では虚血などのストレス侵襲から神経細胞を保護している可能性が考察された。
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