温熱療法の新しい方法として機能性磁性微粒子を利用した脳腫瘍温熱療法の有効性につき検討してきた。現在まで以下の5項目の事実が証明されている。(1)正電荷脂質包埋マグネタイト{magnetite cationic liposome(MCL)}を用いた方法により腫瘍細胞内のマグネタイト取り込み効率が上昇し、抗腫瘍効果が高まる。(2)高周波磁場処理下で腫瘍内に於けるMCLの拡散が顕著であり、磁場処理を重ねるごとに周囲への拡散が進行するため広範囲の温熱効果が期待できる。(3)ラットグリオーマ細胞のラットの大腿部皮下移植腫瘍に対する実験では、腫瘍の完全退縮が得られた。(4)ヒトグリオーマ細胞のヌードマウスの脳内移植腫瘍に対する反復投与実験では、6回投与群では治癒率100%、3回投与群にも腫瘍径の縮小が認められ、脳内において増殖しているグリオーマに対する有効性が証明された。(5)温熱処理による腫瘍細胞の直接的な殺細胞効果と共に、温熱処理によって免疫誘導を促し免疫能を獲得していることが確認された。 今回マグネタイトの新しい材型である機能性磁性微粒子(magnetite)のStick type型材料を用いて温熱療法を施行する際の至適条件を検討した。即ち、carboxymethylcellulose(CMC)とmagnetiteを混和調整し芯状化されたStick type(CMC-mag)をラット移植脳腫瘍内に刺入し、高周波磁場処理を施行。その際の至適条件を検討した。その結果、温熱効果にて生じた脳腫瘍壊死は腫瘍中央に3.3mg Fe_3O_4を刺入後、30分3回照射群に最も顕著に認められ、壊死周辺にはリンパ球の浸潤を認め、また本条件では周辺正常脳への急性期の病理組織学的変化は認めなかった。この結果より、Stick type CMC-Magを用いた脳腫瘍への効率的な温熱効果条件が得られた。
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