Magnetite cationic liposomes(MCLs)を用いた細胞内加温による温熱療法の際に、直接的な温熱抗腫瘍効果の他に、免疫誘導による脳腫瘍退縮効果の有無及びその有用性について検討した。方法としては、まずFisher 344ラット(6週齢、雌)の左大腿部皮下に株化ラットグリオーマ細胞T9を2×10^6/cells/100μl PBSとして移植し、皮下に生着した腫瘍の長径が1cmになった時点(凡そ移植2週間後)で経皮的に30G針にてMCLs400μl(5mg/ml Fe_3O_4)を皮下移植腫瘍中心部へ注入した。その直後より、1日1回、1回30分高周波磁場処理を24時間間隔で3回繰り返し(温熱処理)施行。この処置後、14日目に右大脳半球前頭葉内へ定位的脳手術装置を用いてT9細胞を1×10^6 cells/20μl PBSとして移植し、その後の脳内腫瘍の生着の有無を観察した。その結果、大腿部皮下移植腫瘍を温熱処理の未施行群では、全例脳内腫瘍の増大による脳圧亢進症状にて平均21.5日(n=6)で死亡が確認された。一方、大腿部皮下移植腫瘍の温熱処理施行群では、脳内に腫瘍移植後60日を経過した時点でも全例(n=6)生存していた。その後、この群における脳組織を摘出して病理組織学的所見を検討したところ、未治療群では腫瘍の脳内生着が認められたが、治療群では脳腫瘍は認めなかった。この様に、治療群の生存期間が有意に延長され、脳腫瘍の生着が抑制されたことから、何らかの免疫賦活が関与したことが示唆される。
|