正常の発生分化また創傷治癒において厳格に転写調節されているFGF-2が、脳腫瘍において高発現している理由を推察するとき、何らかの抑制因子が腫瘍にて欠如することによるのではないかと考えられた。そこで、ヒトFGF-2のプロモーター解析を始め、その上流域に脳腫瘍細胞において活性がなくFGF-2の高発現をもたらしうる領域を発見した。この領域は他の腫瘍細胞ではFGF-2発現に対して抑制性活性を示すことを確認している。その調節領域に対してなんらかの結合する蛋白すなわち転写因子が存在するのかどうかを検討するため、gel shift並びにsouthewestern法をい、非脳腫瘍の細胞株に存在し、脳腫瘍の細胞株に存在しない結合蛋白を発見した。これらの状況からこの蛋白は脳腫瘍特異的腫瘍抑制遺伝子の可能性があると思われる。今回この蛋白をコードすると思われる遺伝子をクローニングしており、その機能解析を脳腫瘍細胞にて行い、悪性度との相関関係を調べ診断的価値の有無を確認しようとしているところである。患者腫瘍組織よりRNAの抽出を行い、その発現レベルをRT-PCRにて検討しているが、現在までのところ悪性度の高い組織からは検出されていない。転写因子の発現量については微量であることが多いので、現在定量PCRを使用し再評価を行っている。この遺伝子の機能についての解析であるが、シークエンスの結果より単離したクローンが全長ではないことが判明し現在5′-RACEを行っている。
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