目的:グリオーマの発生・増大の過程においてfibroblast growth factor-2(FGF-2)が重要な働きをしていると考えられており、その発現の調節のメカニズムを知ることを目的とする。 方法と結果:Yeast-one-hybrid法を用いたスクリーニングにより、FGF-2のプロモーター領域に特定の蛋白が結合することを発見し、この蛋白のクローニングとその機能解析を行った。U87MGグリオーマ細胞にtetracycline-on systemを用いて同蛋白を強発現させたimmunocytochemistryの結果では、この蛋白が核および細胞質に存在することがわかった。Luciferase assayの結果では、同蛋白をtransfectしたU87MGとU251MGのグリオーマ細胞で、controlに比較してFGF-2のプロモーター活性が有意差をもって減少していることがわかった(P<0.05)。さらにlight cyclerを用いた定量PCR法により、同蛋白をU87MGグリオーマ細胞に強発現させることによりFGF-2のmRNAの発現量がcontrolに比べて10倍に減少していることが示された(P=0.0010)。 結論:以上より、この特異的な蛋白がU87MGグリオーマ細胞において、転写因子として働きFGF-2の転写活性を抑制していることが示された。今後、実際の脳腫瘍細胞において同蛋白の発現レベルを調べ、臨床的悪性度との相関を調べていく方針である。
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