1)ヒト脳微小血管内皮細胞の分離培養法の確立と無酸素・再酸素化障害機序の解明 頭部外傷手術時における内減圧術によって得られた脳から微小血管内皮細胞を2段階酵素を用いて分離培養する方法論を確立した。培養した脳微小血管内皮細胞に無酸素・再酸素化を加えて細胞障害の発生機序を検討した。再酸素化による細胞内カルシウムの上昇によるLDH漏出が確認され、これはSODにより顕著に抑制されることからsuperoxide発生によるものであることを明らかにした(論文1)。 2)in situ brain perfusion法による脳血管透過性の定量的解析と高浸透圧負荷による脳血管関門の開放と再形成におけるカルシウムイオンと蛋白燐酸化の役割の解明 蛋白燐酸化酵素阻害剤を作用させることによって高浸透圧負荷による可逆的BBB開放のBBB再形成が阻害されるという仮説の下に実験を進めてた。現時点で脳血管透過性の定量的測定の時間分解能を5分に短縮する事が可能となっており、次年度にはBBB再形成期におけるtight junctionの蛋白燐酸化の役割を明らかに出来る見通しである。 3)脳微小血管内皮細胞とアストロサイトの共培養系の確立 血管内皮細胞にマーカー遺伝子としてpEGFP-Nを電気穿孔法にて導入してGFP(green fluorescein protein)陽性細胞を得てアストロサイトとの共培養を行っても両者の鑑別が可能である系を確立した。また、マークした内皮細胞を脳内に移植したところ生着して血管新生する事を明らかにした(論文2)。
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