研究概要 |
本年度の研究実施計画の1,ラット総頸動脈内皮紫外線直接照射実験を行った。全身麻酔下にラット総頸動脈を露出し、血流遮断を行いつつ、2〜3cmの縦切開を行った。血管内面を石英ガラス板をもちいて、平坦にした状態で紫外線を照射した。紫外線照射はVilber Loumat 15W紫外線ランプ(波長は365nm,312nm,254nmの3種類のものを使用)を用いて、約10cmの距離から20分、40分、60分間行った。紫外線照射中は内皮面の乾燥させないように注意し、照射後10-0ナイロン糸により総頸動脈切開部を縫合し、血流を再開させた。総頸動脈血流の十分な再開と、良好な拍動を確認したのち皮膚を縫合し、麻酔から覚醒した。2あるいは3週間後に照射部を再開創したが、血流状態は良好であり、手技上の問題点はなく、また血栓形成や閉塞の所見もなかった。照射部位の総頸動脈を摘出し、ホルマリン固定し、切片を病理組織学的に検討した。紫外線照射から2-3週間の時点では、Hematoxylin-eosine染色およびその他の染色でも縫合部位の修復性変化以外には内皮細胞、弾性板なども含め変化を認めていない。血栓性閉塞や血栓の付着、増殖性の狭窄などの変化も見られないため、この照射量のままで3週間の期間では閉塞性の変化は出現しないと考えられる。今後は以下の2点を検討する予定である。1,さらに紫外線強度を上げるため、照射力の強い光源あるいは紫外線レーザーの使用を試みる。紫外線の効果が出現するまでに、3週間以上の期間が必要である可能性が高いので、2〜3カ月あるいはさらに長期の経過観察行う。
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