研究概要 |
前年度の研究でラット総頸動脈内皮紫外線直接照射実験を行ったが、総頸動脈に明らかな閉塞性変化を認めなかったので以下の実験を行った。全身麻酔下にラット総頸動脈を露出し、血流遮断を行いつつ、2〜3cmの縦切開を行った。血管内面を石英ガラス板をもちいて、平坦にした状態で紫外線を照射した。紫外線照射はVilber Loumat15W紫外線ランプ(波長は365nm,312nm,254nmの3種類のものを使用)のフィルターを除去して、約10cmの距離から20分、40分、60分間行った。紫外線照射中は内皮面の乾燥させないように注意し、照射後10-0ナイロン糸により総頸動脈切開部を縫合し、血流を再開させた。総頸動脈血流の十分な再開と、良好な拍動を確認したのち皮膚を縫合し、麻酔から覚醒した。4あるいは8週間後に照射部を再開創したが、血流状態は良好であり、手技上の問題点はなく、また血栓形成や閉塞の所見もなかった。照射部位の総頸動脈を摘出し、ホルマリン固定し、切片を病理組織学的に検討した。Hematoxylin-eosine染色およびその他の染色でも縫合部位の修復性変化以外には内皮細胞、弾性板なども含め変化を認めていない。血栓性閉塞や血栓の付着、増殖性の狭窄などの変化も見られないため、今回行った方法では血管閉塞性の効果を得ることは出来なかった。この方法で血管閉塞性の変化を得るためには、さらに強い紫外線照射、あるいは光増感剤の併用が必要と推測される。また臨床例では硬膜動静脈奇形の小脳出血例を集積、報告した。
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