研究概要 |
急性硬幕下血腫は重症頭部外傷における最も代表的な疾患で,それによる二次的な脳損傷進展のメカニズムには脳虚血が強く関与している。さらに脳虚血時に発生する脳内アシドーシスは神経細胞障害を増悪させる重要な要因である。我々はこれまでに脳虚血急性期におけるアルカリ化剤(THAM)の有効性を局所脳虚血モデルにて確認し既に研究成果として報告している。また本年までの実験でラット急性硬膜下血腫モデルにおいて脳低温療法の脳浮腫軽減効果(常温群:81.65%,脳低温群:80.88%)と脳梗塞巣減少効果(常温群:87mm^3,脳低温群:59mm^3)も確認している。今回は同ラット急性硬膜下血腫モデルにおいて脳低温療法下にアルカリ化剤を投与することによって、脳浮腫および脳虚血に対し更なる保護効果を有しているかどうかを検討する。具体的には,急性硬膜下血腫モデルを作成後にラットを(1)常温群,(2)脳低温群,(3)脳低温+アルカリ化剤(THAM)投与群の3群に分け,モデル作成4時間後に脳組織を摘出し脳浮腫は乾燥重量法で脳梗塞巣はH&E染色を行いその効果を検討中である。現在までの検討では,アルカリ化剤の投与により脳低温療法のみ以上保護効果が認められる傾向が認められるが,脳低温療法の程度やアルカリ化剤の投与量等を変えて更に検討中する予定である。
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