悪性脳腫瘍は予後不良な疾患で、未だ決定的な治療法がないのが現実である。 そこで近年悪性脳腫瘍に対する遺伝子療法の開発が盛んに研究されるようになってきた。Folkman博士らが、悪性固形腫瘍の増殖は血管新生に依存するとの概念を提唱して以来、血管新生に関する研究が盛んに行われるようになった。そこで我々は血管新生をターゲットとする遺伝子治療法の開発を、転写因子制御の観点から行ってきた。NFkappa Bはあらゆる遺伝子の転写に関与するとされ、この核内移行を細胞質内で制御しているI kappa Bαを制御することで血管新生を抑制しようと試みた。まず、glioma cell lineであるU251にwild typeとmutantのI kappa Bαをプラスミドを用いて遺伝子導入し、形質転換されたU251クローンを樹立した。これらの細胞において、NFKappa Bの核内への移行をゲルシフト法にて比較検討した。また、これらの細胞をラット脳内に移植し、その生存期間、血管新生能等を免疫染色にて比較検討した。また、アルキル化剤を用いた化学療法を有効に行うべく、これら形質転換されたU251細胞のアルキル化剤への感受性も検討した。確定的な結果、結論は見いだせていないものの、mutant I kappa Bαを用いた転写因子制御による遺伝子治療は血管新生抑制、化学療法において有効であることが示唆された。
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