研究概要 |
本研究は正常マウスの大脳が磁気刺激により神経栄養因子の遺伝子を発現するというわれわれの実験事実に基づき、磁気刺激法がもつ治療効果の可能性を実験的骨髄損傷モデルを用いて明らかにした。また、一部慢性脊髄障害の症例で脊髄局所刺激の効果を観察した。 結果 1.脊髄損傷動物の時間経過損傷直後からのc-fosおよび各種細胞性反応は既報の結果に一致した。損傷直後から2時間で、損傷部近傍に著しいc-fos, BDNF遺伝子が発現し、以後漸減、crfosは2-4時間、BDNFは3-6時間以内にコントロール値に帰した。Astrocytesやmacrophages/microgliaの活性は損傷後数日から徐々に上昇し、1週間でピーク。2-3週で下降するものの、損傷中央部やcrush edgeの活性は、4-8週目以降も持続する。行動学的には、損傷直後に完全弛緩性麻痺、1週目から徐々に筋収縮が出現、2週目にはわずかな関節運動、3週目には関節の屈伸〜起立可能な動物も存在した(Tarlov score2〜3)。電気生理学的評価にはmotor evoked potentials; MEPsは行動学的改善に先行することはなく、やや遅れて3-4週目にはコントロール値の38〜55%に改善した。 2.神経損傷後磁気刺激の経時変化 組織学的評価(GFAP染色(reactive astrocyte), Mac-1染色(macrophages/microglia)及び神経栄養因子の遺伝子発現検索の結果、磁気刺激は損傷部のc-fos発現をわずがに増加させたが、持続時間は長くなく、損傷のみの発現の時間経過を大きく変えることはなかった。逆に損傷動物の脳内c-fos発現は、損傷のみ、刺激のみの場合に比較して有意に大きかった(p<0.01)。
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