研究概要 |
細胞表面に発現されている糖脂質糖鎖が神経膠腫の生物学的特性、特に増殖、接着、浸潤に何らかの関わりを持つことを明らかにする目的で実験を行った。ラットグリオーマ細胞株RG2はその糖脂質成分がほぼGM3ガングリオシドからなる単純な組成を示している。糖脂質合成抑制剤D-PBPPを作用させるとRG2細胞はMatrigel invasion chamberにて浸潤能の亢進を示す。これに外来性のGM3を投与して糖脂質発現を正常化させると浸潤能の変化も元の状態に回復した。これによりGM3が浸潤に抑制的に機能していることが示唆された。さらに糖鎖抗原の発現を変化させることにより細胞の接着、浸潤との関わりを検証すべく糖鎖改変のためのシアル酸転移酵素遺伝子を導入し、GD3ガングリオシドに改変したクローンをした。平成11年度の実験では細胞の形態、増殖能、細胞間基質(collagen type I,IV,laminin,fibronectin)に対する接着性、Matrigel invasion chamberにおける浸潤能のいずれのアッセイにおいてもRG2 wild typeとRG2-GD3クローンの生物学的な機能に変化は認められなかった。平成12年度はGD3発現量の異なる3クローン(FACS解析ではGD3 26%、65%,100%陽性)を用いて同様の実験を行った。本年度の実験でも細胞の形態、増殖、接着、浸潤いずれのアッセイにおいても有意な変化を認めることはできなかった。以上の結果からRG2細胞においてはGM3にシアル酸を転嫁させたGD3に糖鎖構造を改変しても生物学的な機能には大きな変化は現われないものと結論された。
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