パーキンソン病に対する神経移植と脳深部電気刺激に関する研究

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11671380
• 研究機関: 和歌山県立医科大学
• 研究代表者: 板倉 徹 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (40100995)
• 研究分担者: 中尾 直之 和歌山県立医科大学, 医学部, 助手 (30301435) ; 上松 右二 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (90223502) ; 中井 國雄 和歌山県立医科大学, 看護短期大学部, 教授 (20180234)
• キーワード: パーキンソン病 / 細胞移植 / 交感神経節

研究概要

われわれはパーキンソン病に対する自家交感神経節の脳内移植を考案し、その有効性を実験的、臨床的に明らかにしてきた.今年度はパーキンソン病に対する胸部交感神経節の脳内移植の効果を国際的評価の基準に従って臨床的に検討し、その効果発現の機序を手術検体をもとに実験的に検討した.
1.臨床効果 新たなprotocolのもとに臨床効果を検討したのは4症例で、いずれも自家胸部交感神経節を一側線条体3ヶ所と尾状核1ヶ所に移植した.効果の判定はUnified Parkinson Disease Rating Scaleを用いCore Assessment Program for Intracerebral Transplantationsに準じた.その結果、交感神経節移植の効果は術後1-2ヵ月後から現れた.特に一日に占めるoff時間(%off)の有意な短縮を認め、この効果は1年以上持続した.またL-dopa1回投与後の効果(single L-dopa test)も移植後、優位に時間の延長が見られた.つまり移植により患者は薬の持続時間が延長していることが示唆される.
2.実験結果 上記の移植による効果発現の機序を解明すべく、患者胸部交感神経節を培養し各種実験を行った.交感神経節培養7日目で培養液中のnorepinephrineとDOPACはL-dopaの滴与により著明に増加し、検出されなかったdopamine(DA)も検出されるようになった.dopaからDAへの変換酵素であるAADCやDA取り込みに関与するVMAT阻害剤の投与でこの増加は抑制された.またヒト交感神経節内にAADCとVMATが存在することは免疫組織化学的にも明らかとなった.
以上の結果は交感神経節の移植は移植された神経節細胞がL-dopaを取り込み貯蔵することによって効果を発現していることが示唆された.

研究成果

• [文献書誌] Nakao N.Yokote Y.Nakai K Itakura T: "Promotion of surrival and rogeneration of nigral dopamine neurous in a rat model of Parkinson's disease after implantation of embryonal carcinoma-derived neurons"J.Neurosurg. 92. 659-670 (2000)
• [文献書誌] Nakao N,Itnkura T: "Fetal tissue transplants in animal models of Huntington's disease."Prog Neurobiol. 61. 313-338 (2000)
• [文献書誌] Nakao N Itakura T: "Transplantation of GDNF-Producing cells promotes survival and regeneration of nigral dopamine neurons"Neurochem Res. 25. 1008-1009 (2000)
• [文献書誌] 中尾直之,板倉徹: "神経移植術の現状と適応"日本臨床. 58. 128-134 (2000)
• [文献書誌] 中尾直之,板倉徹: "細胞移植によるパーキンソン病の治療"科学. 70. 470-474 (2000)
• [文献書誌] 中尾直之,垣下浩二,上松右二,中井國雄,板倉徹: "パーキンソン病に対する自家胸部交感神経節移植の臨床効果とその発現機序"機能的脳神経外科. 30. 56-57 (2000)
• [文献書誌] 板倉徹: "パーキンソン手帳"ブレーン出版. 60 (2000)