頭蓋内動脈硬化性病変に対する血管内治療はようやく始まったばかりで数多くの検討すべき問題点が残されている。臨床例では血管形成術の長期予後とステント治療における有用性と問題点について検討をおこなった。基礎的研究ではステント留置にともない穿通動脈が温存されるかを中心に検討した。 (1)臨床的検討:臨床例として現在まで、45例の頭蓋内動脈硬化性病変に対して血管内治療を行った。PTA群とステント群のそれぞれの問題点について検討した。45例中44例で良好な血管の拡張が得られた。1例は屈曲が強くPTAバルーンが挿入できず残念した。10例中2例でステント留置がうまくゆかずPTAのみで終了した。ステント留置群(80-4%)ではPTA単独群(75-27%)に較べて有意な拡張を認めた。再狭窄に関してもステント群で少ない傾向にあったが有意差は認めなかった。ステント群で2例にステント閉塞、ステント脱落というステント特有の合併症を認めた。出血性合併症を2例に認めた(1例はhyperperfusionによる出血で死亡、他の1例は合併した動脈瘤の破裂)。虚血性合併症は4例(2例は一過性で2例は軽度の障害を残した)であった。再狭窄は7例に認められ後日再治療を行った。平均経過観察期間は2年9ヵ月で、病変に起因した新たな脳梗塞は出現していない。頭蓋内動脈硬化性病変に対する血管内治療は9%程度のmorbi/mortalityを有するが、脳梗塞の予防には有用であった。ステント群ではPTA群に比して有為な拡張が得られたがステント挿入、急性閉塞などの特有の合併症も存在したため、使用には十分な注意を要する。(2)基礎的検討:家兎の腹部大動脈径は約3ミリであり、ここより約500ミクロンの腰動脈がほぼ90度の角度で分岐しており、解剖学的には人脳主幹動脈と穿通枝の関係に類似している。今回、腹部大動脈の腰動脈分岐部にステントを留置し、3ヵ月後に開存の状態を血管撮影と走査電子顕微鏡(SEM)にて検討した。ステント留置を行った6羽全例でステント留置にともなう合併症はなく、術直後、3ヵ月後ともに血管撮影で腰動脈の描出は良好であった。SEMによる検討では、腰動脈orificeがstent strutにクロスしているもの、strut間に存在するものを認めたが、全例において閉塞所見は認めなかった。正常血管においてはステントStrutが500ミクロン程度の穿通枝をクロスしても血管は開存していることが確認された。
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