本研究の自的は、内皮細胞をビオチン化し、それにすでにビオチン化されている物質を、avidinを介して内皮細胞に付着しうるかを調べ、さらにこれが内皮細胞への遺伝子導入に利用可能かを調べることである。ウサギの腎臓を用いた、in vivoの実験および培養内皮細胞を使用したin vitroの実験では、ビオチン化された物質(fluorescenceで標識したbiotin)を内皮細胞のビオチン化そしてavidinの投与の次に行うことによって、実際に内皮細胞の表面に付着させうることが示された。しかしながら10^<-9>から10^<-8>の低濃度のビオチン化された物質を投与した場合はその存在が検出されなかった。そこで、まずビオチン化された物質とavidinを結合させ複合体を作成し、その中のavidin分子の残りのbinding siteで細胞上のビオチンと結合させることを試行した。ビオチン化された物質に過剰なavidinを与え、その混和液をビオチン化された内皮細胞に投与すると、その複合体の存在が細胞に検出された。これをふまえて、ピオチン化されたDNAとavidinの複合体を作成し、ビオチン化処理した培養内皮細胞に与え、遺伝子の発現が見られるかを実験した。green fluorescence protein (GFP)の遺伝子を含む二重鎖DNAをビオチン化しavidinと混和し、ビオチン化された対数増殖期の培養内皮細胞に与えたところ、2日後にGFPの発現が確認された。本方法は新しい遺伝子導入方法となる可能性を示唆した.
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