研究課題/領域番号 |
11671387
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
藤井 清孝 北里大学, 医学部, 教授 (10128085)
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研究分担者 |
山田 勝 北里大学, 医学部, 助手 (90210484)
入倉 克巳 北里大学, 医学部, 講師 (70176519)
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キーワード | 静脈性脳虚血 / 脳血管障害 / 脳動静脈奇形 / 静脈圧亢進 / 脳血流量 / ラジオアイソトープ / 脳血液量 / ラット |
研究概要 |
脳血管奇形に伴う脳静脈圧亢進がもたらすいわゆる静脈性脳虚血の病態生理は不明である。頚部動静脈シャントによるラット脳静脈圧亢進慢性期モデルを作成し、その脳循環を検討した。 (1)ラット脳静脈圧亢進モデル 上矢状静脈洞内圧(SSSP)は、静脈圧亢進群(n=12)で15±4mmHg(平均±標準偏差)、動静脈結紮群(n=4)で5±2mmHg、sham手術群(n=6)では5±3mmHgであり、静脈圧亢進群で有意に上昇していた。他の生理学的パラメーター(平均動脈圧、脈拍数、血液ガス)は、各群に有意差はなかった。 (2)^<14>C-iodoamphetamine (IMP)による脳血流絶対値(rCBF)の測定。 rCBFは、sham群、動静脈結紮群、静脈圧亢進群の順に77±11、90±16、103±13ml/min/100gであり統計学的に有意差が認められた。^3H-rat serum albuminを用いて、脳血液中に存在して脳実質に取り込まれていない^<14>C-IMP量を推定しこれを差し引いた結果でも、sham群に比して静脈圧亢進群では有意に、rCBFは増加していた。 (3)考察 このモデルではSSSPは有意に上昇していたが、臨床例から予測された脳血流低下ではなく、rCBFの有意な増加を認めた。IMPの脳取り込み機序は、細胞内外のpH勾配、非特異的高容量アミン結合部位への結合などが考えられている。脳血液量増加によるみせかけのrCBF増加の可能性はPlasma tracerの結果から否定的であり、またSSSPの上昇のない動静脈結紮群においてもrCBFの有意な増加がみられたことから、このrCBF増加は、静脈圧上昇によるIMPの取り込みの変化(アミン結合部親和性や細胞内pHの変化)ではなく、循環遅延によるIMPのfirst pass extractionの増加による可能性がある。静脈圧亢進による局所のIMPの脳血液分配係数の変化は全く不明であり、今後は他の方法による脳血流量測定や、臨床例により近似した病態モデルの開発が必要である。
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