研究概要 |
重症脳障害患者の局所脳組繊代謝に及ぽすICP亢進・全脳虚血と低体温療法の効果を明らかにするため,脳局所と比較的広範な脳実質細胞外液の変化を反映するとされる髄液において,酸素代謝のみならず,嫌気性代謝産物に影響される脳アシドーシス,興奮性アミノ酸,glycerol,free radical,脳血流や電気生理学的活動をモニタリングし,それに及ぼすICP亢進・CPP低下に伴う全脳虚血の影響を評価,さらにそれらに対する低体温療法の効果を,併用される治療法とともに解析することにある.本研究において,脳組繊と髄液の酸塩基平衡,温度に加え,脳局所細胞外液を脳微小透析法によりHPLCを用い測定,局所脳血流,ICP測定と共にコンピュータモニタ解析システムを用いて,ICP亢進とCPP低下が局所的な脳実質の変化と全脳的な髄液とに及ぼす影響を評価,低体温療法の影響を併用される治療法とともに解析する.頭蓋内での脳微小透析法につき杏林大学医学部倫理委委員会より承認されたが,臨床症例が数例しか集まらず研究の進行が遅れている.このため,脳血管障害による重症脳障害,とくに脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血時に併用される血管内治療法による基礎実験を行った.16匹の成豚の外頚・上咽頭動脈分岐部で全身麻酔下に動脈瘤を作成し,常温下にてGDCを用いて塞栓術を行い,コントロール群として7動脈瘤を摘出,22動脈瘤に対しては創傷治癒因子であるFXIIIを投与3週間後に摘出し血管内皮の状態を走査顕微鏡にて評価した.コントロール群と比較しFXIII投与群では繊維芽細胞・血管内皮の増殖がみとめられた.結果より脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血による重症脳障害患者に対しては血管内治療法とFXIIIの併用が有効と考えられる.
|